うちの周りには温泉がけっこうある。それも公営の温泉が多い。だから料金も格安だ。回数券を買って通ったこともある。それが十数年前のこと、いつの頃からか温泉には行かなくなった。
この本を読んで思い出したのが昔通っていた温泉の湯煙やお湯の感触、とろんとしたお湯だった。あがってからも温かさが持続したので冷え性の人にはいい温泉だった。行った夜はよく眠れた。
気持ちいいから、体が楽になるから、温泉に行く理由はいろいろあるけれども、あんまりはっきりとした理由がなく行っていたみたい。惰性かな。今思い出したが、温泉に入るとボーッとした気分になって動くのが億劫になる。ほんとはそのまま横になりたい、寝てしまいたい、それができずに運転して帰ってくるのが面倒になったから温泉に行かなくなったんだ。
取り上げられている温泉は6つ、新潟の貝掛温泉、山形の姥湯温泉、福島の甲子温泉、熊本の杖立温泉、同じく熊本の弓ヶ浜温泉、長野の高峰温泉、どれも秘湯だ。温泉にたどり着くまでが大変な場所にあるところもある。冬期は休業する温泉もある。
この本は温泉を紹介するというよりは、自分の思いを吐露しているようにみえた。温泉につかって体がほぐれてくれば心もほぐれてくる。普段封印していた気持ちも体がゆるんでくると、たがが外れたようにベロベロと外へ放出される、そういったことは私も味わったことがある。からだがゆるむということは心もゆるむということかもしれない。
温泉に入ることによって気持ちがよくなったら、もう考えるのが面倒くさくなる。だからいろんな思いはそのままにして答えは出さなくてもよい。そのままにしておこう。年をとってくると特にそう考えるようになる。悩みに悩み解決できたらいいけれども、そうならないことも多いものね。
温泉の雰囲気、においを味合わせてくれる絵で、久しぶりに昔通った温泉のことを思い出しました。今コロナによる自粛からようやく解放されつつあるが、こうした温泉場が前のようにに賑わいを取り戻せるように願っています。